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糖尿病網膜症は、糖尿病三大合併症の1つで、高血糖が続くことで網膜の細くて小さな血管が障害を受け続けることが原因となる網膜症です。発症は、糖尿病になってからの期間が密接に関係していて、糖尿病を無治療で放置した場合、7~10年で約50%、15~20年で約90%が網膜症を発症するとされています。
糖尿病の患者さんは1000万人を超えており、そのうち糖尿病網膜症を合併している患者さんは約140万人(約15%)と推定されています。糖尿病は新薬の開発もあって効果的な薬物治療が行われており、適切な血糖コントロールや眼科治療により、発症や進行が抑制できるようになっていますが、初期の段階では自覚症状が全くないため、重症になるまで眼科を受診しない患者さんが多いことが問題になっています。近年でも、毎年約3000人が糖尿病網膜症によって失明しているとされ、成人の視覚障害の原因の第三位です。
視力を作る網膜の中心である黄斑部に病変がなければ自覚症状がほぼありません。しかし、糖尿病によって血管はダメージをうけ、無自覚のまま血管に小さな瘤ができたり小さな出血が生じ、網膜にはむくみ(浮腫)や出血がところどころに散らばっている状態です。血管からたんぱく質や脂肪が漏れて網膜に付着することがあり、硬性白斑といいます。単純(糖尿病)網膜症と呼ばれています。血糖コントロールはHbA1c7.0%未満が目標となります。血圧が高い場合にはこちらの治療も内科で受けて頂きます。程度にもよりますが、眼科診察は3~6か月に1回が推奨されています。
単純網膜症は、血糖コントロールが良好であれば、元の正常な網膜に戻ることができます。しかし、後に詳述する増殖前網膜症と増殖前網膜症の病態では元の状態に戻ることが出来ません。
網膜血管のダメージが強くなってきて、血液の流れがとどかない網膜の領域が生じ始め、網膜の虚血となっている病態を増殖前網膜症といいます。これも黄斑部に病変が至らなければ自覚症状がないことが多いのです。
血液の届いていない網膜はその後に網膜血管の増殖を引き起こすため、その範囲が広い場合には網膜光凝固術を行い、その網膜をレーザー光で照射し発生した熱で網膜の組織を凝固させる治療です。網膜症の悪化を防ぐために行う治療法です。増殖前網膜症の患者さんは、眼科診察を1~3か月以内に1回をお勧めします。
網膜や眼球の中のゼリー状の物質である硝子体に、増殖した結果伸びてきた異常な網膜血管が存在している病態です。もやがかかったような見え方(霧視:むし)や煙のススや小さな虫(蚊)のようなものが見えるといった自覚症状が出てきます。網膜などに新生血管や増殖膜が眼底検査でみられます。増殖膜が広がって経過とともに縮みはじめると牽引性網膜剥離を引き起こし、広い範囲で網膜が剝がれると失明に至ります。硝子体出血や牽引性網膜剝離を伴った増殖網膜症には硝子体手術が行われます。増殖膜を除去して剥がれた網膜を元の位置に戻します。しかし硝子体手術や網膜症の進行を抑制する効果がないため、手術中または手術後に網膜光凝固術を行います。
どの病気でも黄斑部浮腫は生じますが、腎機能が悪い患者さんや増殖網膜症に進行しているとその頻度が高くなります。視力が低下してものがゆがんで見えたりします。そのほか、虹彩や隅角という目の中のお水を排出する口にあたる領域に新生血管が出来ることを虹彩ルベオーシスといい、増殖網膜症の末期に合併します。虹彩ルベオーシスが進行すると、隅角が閉じてしまうので目の中のお水を排出できなくなり眼圧が非常に高くなります。血管新生緑内障といい失明の原因となりうるものです。
HbA1cが10%以上の患者で、増殖前または増殖網膜症がみられたら、すぐに網膜光凝固術を行ってから、強化インスリン療法を行います。
糖尿病の診断を受けたら、自覚症状がなくても必ず半年に1度の頻度で眼科検診を受けましょう。
糖尿病の適切な内科の治療および食事や運動などによる血糖コントロールで発症と進行を抑えることは可能です。網膜症が出始めた時に、すぐに眼科と内科の間で密な情報交換を行い、適切に血糖値をさらに下げる治療によって進展を予防します。それ以上に進行してしまった場合は、レーザーによる網膜光凝固術で虚血した網膜をレーザーで凝固させて新生血管の発生を抑制します。硝子体出血や網膜剥離、黄斑部の牽引などが確認された場合には、硝子体手術が必要になります。当院では網膜光凝固術および外科的治療が必要な場合は連携のある病院へご紹介させていただきます。
ものを見るための視機能で最も重要な、網膜の中心部である黄斑部(おうはんぶ)が障害されるのが加齢黄斑変性です。
高齢者、男性、喫煙者に多いという傾向があり、ものが歪んで見えたり(変視、歪(わい)視)、視力が下がったり、中央部が見えづらいという自覚症状が出ます。年齢が上がるごとに発症率が高くなり、高齢化に伴って日本でも増加傾向にあります。高齢者の視覚障害の原因疾患の第4位です。(欧米では高齢者の失明原因の1位です。)加齢や喫煙などのほかに、食生活や紫外線暴露などの環境因子と遺伝因子が関係している多因子の病気と考えられています。
眼底検査で、黄斑部の出血、白斑や瘢痕が生じます。網膜の下にある脈絡膜から新しい異常な血管が生じることが原因です。
多くは片眼性ですが、加齢とともに両眼性が増加し、両眼性が4割とされています。
加齢性黄斑変性症には、滲出(しんしゅつ)型と萎縮(いしゅく)型に分類されており、日本では滲出型が多いとされています。萎縮型から滲出型に移行する場合もあります。なにも治療を行わないと、視力は非常に低くなってしまい、視力0.1以下になります。
脈絡膜の新生血管の増殖を阻止し、小さく退縮させるための治療として、抗VEGF薬硝子体注射(場合により光線力学療法を併用)や網膜光凝固術を行います。その症状や程度によって、いくつかの治療方法があります。注射治療やレーザー治療が必要な場合は提携病院へ紹介させていただきます。
網膜に穴が生じることで、網膜が剥がれることを裂孔原性網膜剝離を生じます。主な原因は加齢と近視です。加齢が原因の場合は年齢は50~60歳代に多く、近視が原因の場合には20~30歳代に多い傾向があります。網膜剥離では、剥がれた領域の視野が欠けてしまい視力が下がることがあります。裂孔原性網膜剝離では、さらに初期に飛蚊症や網膜が剥がれる刺激で光視症が生じることがあります。放置すると網膜剥離が進行するため、視野欠損の領域は広がり、黄斑部に剥離が到達すると急激な視力低下が生じます。放置すると失明に至ってしまいます。
治療は、穴を閉鎖して剥離を防ぎ、また剥離の進行を抑えることにあります。剥離がみられたらなるべく早く手術(強膜内陥術や硝子体手術)を行う必要があります。
網膜裂孔などの穴だけがの場合網膜光凝固術や冷凍凝固術を行います。
若年者の裂孔原性網膜剝離の場合強膜内陥術が第一選択
中高年の裂孔原性網膜剝離の場合硝子体手術が第一選択で、硝子体を除去して眼の中に空気を入れることで網膜を元に戻す(復位)させます。
見つかり次第、連携している治療に適切な医療機関へ速やかにご紹介させていただきます。
血栓や塞栓により網膜静脈が閉塞することで、網膜に出血が生じて、急激に片眼の視力が下がり、視野が欠けるという病気です。閉塞する部位によって、網膜中心静脈閉塞症や網膜静脈分子閉塞症にわけられます。後者の頻度が圧倒的に多く、自然に治る傾向があります。
高血圧、動脈硬化、糖尿病がある中高年に多い傾向があります。
眼底検査では静脈が詰まっているので拡張してへびのように蛇行し、その周囲の網膜には出血が見られます。
治療としては、黄斑部にむくみ(浮腫)が生じている、又はその予防として抗VEGF薬硝子体注射を行います。新生血管が発生する可能性がある場合には網膜光凝固術を行います。
治療が必要な場合は、連携している医療機関に速やかに紹介させていただきます。
視野の中心である網膜の黄斑部に、穴はあいていないのですが網膜が限られた範囲で剥がれてしまう病気です。網膜の下から水分が網膜へ漏れてしますため網膜が本来あるべきところから離れていってしまうことで生じます。
40歳以上の男性に多い傾向があります。
ストレスをきっかけに片眼に発症することが多いです。ものが歪んで見えたり(歪視、変視)や、ものが小さくみえる(小視症)を自覚します。視力の低下はないかあってもわずかです。中心が薄暗く見えるなどの症状もあります。
治療として、ストレスを避ける生活指導を行いつつ経過観察を行います。3~6か月で自然に治る症例がかなり多いとされています。自覚症状が強かったり、または再発を繰り返す場合には網膜光凝固術を行います。病変の部位によっては光線力学療法を行うこともあります。
治療が必要な場合には、適切な医療機関に速やかにご紹介させて頂きます。