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小児眼科

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子どもの眼について

生まれたばかりの赤ちゃんは視力などの視覚は低く、成長とともに発達していきます。視覚には感受性というものがあり、良好な視覚刺激があった場合に、出生直後は低いのですが生後1~18ヶ月は非常に高く、その後ゆっくり減衰して8歳までに消えていきます。つまり、1歳半ごろまで視力を作る土台をつちかっていくのです。
でも、考えてみてください。乳児の赤ちゃんが「こっちの眼が見えにくいんだけど、、」ということはないですよね?
視力検査がようやくできる3歳頃に病気が発見されるのでは、視力が伸びる時期を失ってしまっていることがあるのです。

  • この子のこっちの眼はずれてる?
  • 振り返った時の瞳が白く光った?
  • 眼の奥に白いものがあるような気がした
  • 眼の大きさが左右で違う気がする

など、日常の中でふと気が付いたり疑問に思ったことがあれば、小児眼科医にぜひご相談下さい。

赤ちゃんや小さな子の眼になにか病気はなるべく早く見つけださないと治せない病気もあるのです。

視覚の発達

生まれたばかりの赤ちゃんは、はっきりものが見えません。生後3か月になると0.02、1歳で0.2くらいの視力になると考えられます。3歳までに急激に視覚が発達し、3歳で0.6~0.9、5歳で1.0以上となり視力は成熟していきます。見ようとして「見えた!」という繰り返しのなかで、くっきりしたものを眼球がその像をとらえて「見る」うちに視力が脳で作られて発達していきます。
両眼視機能という、二つの眼を使って立体視する視覚野発達は、生後4~6か月での両眼への視覚刺激により土台ができあがって備わっていくと考えられています。その後に発症した調節性内斜視では6歳頃までに眼位を矯正して安定させることができれば、立体視機能を得ることもあります。

弱視とは

正常な視力の発達が損なわれた状態です。眼の検査では眼そのものには正常に作られていてきちんと見えるようにできている眼球なのに、視覚感受性期に良好な視覚刺激が得られなかったことが原因になります。

つまり

  • ピントがあっていない(屈折異常弱視)
  • 片方の眼だけピントがあっていない(不同視弱視)
  • 片方の眼の位置がズレていたのでそちらの視力育っていない(斜視弱視)
  • 眼に視覚刺激が与えられない(形態覚遮断弱視)

の4つがあります。

弱視の治療

弱視の治療は上記の種類によって異なります。

  • 屈折異常弱視や不同視弱視の治療の何より大切なことは、なるべく早く、できれば3歳頃までみつけて適切な弱視治療用眼鏡を掛けることにあります。見ようとして目を使って眼鏡でピントの合った状態で「見えた!」という日々の積み重ねが弱視を治していきます。
  • 斜視弱視であれば、ずれた眼を使ってものを見る時間を増やすために健眼遮蔽を行います。視力の高い方の健康な眼をアイパッチなどで隠して、弱視眼を積極的に使うようにします。1日2時間の遮蔽から行うことが多いのですが年齢や病状によって変わりますので、これは決して自己判断で行わず小児眼科医の指示に従ってください。
  • 形態覚遮断弱視は、生まれつきの白内障(先天白内障)や先天性の眼瞼下垂、乳幼児への不適切な眼帯の使用によって生じます。何が原因で起きたのかを確認することが必要で、基本的には元の病気の治療に準じて弱視治療を行います。

子どもの眼鏡処方に関する検査方法

大人の場合は、視力検査の流れの中で、どのレンズを入れるとどう見えるのか返答してもらいながら適切な眼鏡度数を選定していきます。しかし、子どもの場合はどの見え方が最もよく見えるのか本人が答えられない場合が多いです。とくに弱視の場合はそもそも視力が発達していないのですから「見える」という返答がない中で、適切な眼鏡度数を選んでいかねばなりません。
そのために、ご家庭で1週間1日2回アトロピンという点眼をしてきて頂いて7日目に検査を行う方法と、当院の中で5分の間隔をあけて4回点眼を行う方法のどちらかを使って、眼の調節筋というピント合わせをする筋肉をしっかり緩ませます。
その後、形態型(スポットビジョンスクリーナー)の機械で、または、あごを載せてもらって赤い風船の画像をじっと眺めてもらいながら測定する据え置き型(オートレフ)という屈折を測定する機械で、遠視・近視・乱視の度数を測定して眼鏡度数を決めて眼鏡処方箋を作成します。

  • オートレフ

  • スポットビジョン
    スクリーナー

弱視の訓練

弱視治療は適切な弱視治療用眼鏡を掛け続けることが主軸になることが多いのですが、それだけでは視力の左右差が改善しないことがあります。不同視弱視、斜視弱視では、視力の低い方の眼を積極的に使って視覚刺激を増やす必要があるため、視力が良好な方の眼をあえて隠してものを見る訓練である健眼遮蔽という訓練を行うことがあります。アイパッチという眼を覆うシールを使う場合が多いです。具体的には1日2~4時間行うことが多いのですが、年齢や病態によって時間は変わります。決して自己判断で行わず、小児眼科医の指示に従って行ってください。

その他、子どもの年齢に合わせて濃度を薄めたアトロピン点眼液を視力が良好な方の眼にさして、あえて良好な眼を近くを見るときはぼやけせ、弱視の眼を積極的に使わせるアトロピン・ペナリゼーションという訓練法があります。これはアイパッチと異なり、遮蔽はしないので心理的な圧迫感が少ない利点があります。詳細は医師に相談し、必ず医師の指導に基づいて訓練を行ってください。

長い訓練をしている間には、気持ちがくじけそうな時はどんな方にも必ずあります。
そうした内容も受診の際にはぜひお話し下さい。お子さんとご家庭に合った訓練方法を見つけていきましょう。

眼の良く見えないお子さんへ:子どものロービジョン

生まれつき目の病気や異常があり、見え方が十分でないお子さんがいます。そうした時、「この子は目が悪いから仕方ない」と諦めるのではなく、少しの視力でも最大限に活用できるようサポートすることが大切です。これが、子どものためのロービジョン・ケアです。

例えば、眼鏡による矯正で、網膜に少しでもクリアな映像を届けられるようにします。また、お子さんが成長するにつれて、就学や進学、就労といった生活環境が変わり、それに伴って「どのような見え方が必要か」というニーズも変化していきます。

私たちは、それぞれのお子さんに合わせた視覚補助具、拡大鏡やデジタルデバイス(ICT機器)を選び、使い方の指導も行いながら、一人ひとりに最適なサポートを提供いたします。

  • ルーペを使う男児

  • iPad を眺める女児

ロービジョン児の眼鏡の種類

視覚障害者手帳を取得すると、「補装具費支給制度」の対象となり、以下のような眼鏡について公費で助成を受けることができます。

屈折矯正のための眼鏡

弱視用眼鏡

注意:「弱視」という言葉には、屈折異常や不同視弱視、斜視弱視などは含まれていません。役所で視覚障害のある方の見え方を「弱視」と表現する慣例に基づいています。

  • a. 前掛け式弱視用眼鏡

    ガリレオ式弱視鏡をつけて漫画を読む男子

    眼鏡に装着する小型・軽量の拡大鏡で、網膜上の映像を拡大する効果があります。

  • b. 焦点調整式弱視用眼鏡

    単眼鏡で眺めている男児

    「単眼鏡」とも呼ばれる手のひらサイズの望遠鏡で、焦点調整によりさまざまな視距離で使用可能です。持ち運びに便利で、必要な時にさっと取り出して利用できます。

遮光眼鏡

生まれつきの眼の病気を持つお子さんには、強いまぶしさを感じやすいものも少なくありません。遮光眼鏡は、サングラスとは異なり、羞明を軽減するために短波長光を主体に波長をコントロールするフィルターレンズを使用しています。光過敏症の症状が見られる発達障害のお子さんにも効果があり、視界のコントラストが高まるため、くっきりと見えやすくなります。
レンズには色調や濃さが異なる種類が多数あり、子ども自身の感じ方に応じたレンズを選ぶため、処方時には室内や戸外でのトライアルを行い、症状がしっかり軽減するレンズを選定します。度付き加工が可能なほか、普段の眼鏡の上から使えるオーバーグラスタイプもあります。

成長に合わせたロービジョン・ケア

乳幼児期

保育園や幼稚園に通うロービジョンのお子さんには、運動発達の段階に合わせて、見えている距離や見たい距離に適したピント位置で眼鏡を処方し、かけてもらいます。ハイハイをしている小さなお子さんや、一人歩きがまだ安定していないお子さんには、ヘアバンド式のかぶるタイプの眼鏡があり、近くをしっかり見せられる距離を計算して眼鏡度数を決定します。

就学準備期から学童期

家庭での日常生活はもちろん、学校での集団生活や学齢に応じた学習に対応できるよう、眼鏡を処方します。学校生活では、黒板を読み取ったり、読書や文字の書き取り、集団での移動や遊び、体育の授業への参加など、多様な視覚の要素が求められます。 そのため、屈折検査や視力検査だけでなく、年齢や必要性に応じて視野検査や読書に適した文字の大きさを選ぶ検査も行います。検査結果をもとに、お子さんのニーズに合った眼鏡や視覚補装具を選び、処方します。

補装具費支給制度

お子さんであっても、視力や視野が視覚障害に該当する場合は、視覚障害の申請を行い、障害者手帳を取得することができます。成長によって視機能が改善する可能性もあるため、小さい年齢のお子さんには「再認定」を行う条件で手帳が交付されることがあります。

「補装具」とは、「失われた身体機能を補完・代替する用具」のことで、障害者総合支援法に基づき、品目ごとに定められた上限価格の約9割が支給されます。視覚障害で身体障害者手帳を取得しているお子さんや、指定難病などで視機能低下が認められるお子さんには、眼鏡が補装具として認められています。

この制度の実施主体は市町村であるため、運用方法や支給の可否判断は市町村ごとに異なる場合があります。また、世帯の所得によっては自己負担額が減免されたり、制度の対象外となることもありますので、申請時にはお住まいの自治体にご確認ください。

制度上、眼鏡の支給は原則1個とされており、耐用年数は4年です。ただし、「屋内用」「屋外用」といった用途が異なる眼鏡が必要な場合、医師がその理由や必要性を説明することで、最大2個まで支給を受けることが可能です。

また、指定難病を持つ小児の場合、身体障害者手帳を取得していなくても、視機能が視覚障害に相当する程度であることが医師の意見書に記載されていれば、眼鏡を補装具として申請することができます。詳細については、診察時に医師にご相談ください。

その他のロービジョン・ケア

視野が狭くなる網膜色素変性症や、眼振や羞明が強い無虹彩症のお子さんは、体育や階段の上り下り、遠足や修学旅行で友達と同じ速度で歩くことが難しい場合があります。白杖を使って歩く訓練は、お子さんでも訓練施設で受けることが可能です。詳細については、診察時に医師にご相談ください。

また、iPadなどのデジタル機器を使うことで、見たいものを写真に撮って拡大して確認したり、画面の明るさを調整したりすることで、黒板の内容を読みやすくしたり、教室での授業に参加しやすくなっています。こうしたデジタル機器を活用した普通科での授業参加についても、できる限りサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

斜視とは

両眼でものを注視するときに、左右の眼の向きがずれている状態です。眼の位置の異常です。
小さい子どもの時期に斜視があると、両眼を使ってものを立体的に見る力(両眼視)の発達が妨げられてしまいます。
それまでは斜視がなかったのにある程度の年齢になってから斜視がでてくると、ものが二つにみえる(複視)という症状がでて日常生活に困難が生じることがあります。

さまざまな斜視

お子さんの斜視には様々なタイプがありますが、主に下記の斜視があります。

乳児内斜視(先天内斜視)

生後6か月以内に発症する内斜視です。主に手術による眼位の改善が治療の基本になります。生後8か月以内に手術する超早期手術と、2歳以内に行う早期手術の分類があります。

(部分)調節性内斜視

遠視の眼でなんとかものをみようと無理なピント合わせをすることで生じる内斜視です。発症は1~3歳頃が多いですが、生後6か月以内に発症することもあるので乳児内斜視と間違えないようしないといけません。適切な眼鏡をかけて目の位置は改善します。部分調節性内斜視は眼鏡をかけても、ある程度は内斜視が残っている斜視をいいます。

間欠性外斜視

ときによって外斜視がでるものを間欠性外斜視といいます。斜視の中では最も頻度が多いです。眼鏡をかけたほうが眼の位置のコントロールが良くなることが多いので必要なときは眼鏡を処方します。外斜視になる頻度が少なければ両眼視機能は良好なことが多く、経過観察だけを行うことも多いです。眼のずれるタイミングが多かったり、備わっていた両眼視機能が発揮できない場合には手術治療を受けます。

そのほか

上下斜視、麻痺性斜視などがあります。
※手術治療が必要な場合には、迅速に連携している医療機関へご紹介を致します。

斜視弱視

斜視弱視の治療は、ずれた眼を使ってものを見る時間を増やすために健眼遮蔽を行います。視力の高い方の健康な眼をアイパッチなどで隠して、弱視眼を積極的に使うようにします。1日2時間の遮蔽から行うことが多いのですが年齢や病状によって変わりますので、これは決して自己判断で行わず小児眼科医の指示に従ってください。
眼鏡をかけたほうが目のコントロールを良好に安定させることが多く、その場合は眼鏡処方を致しますので、医師の指示に従って掛けるようにしてください。

学校健診について

学校検診でA判定以外の結果が出た場合、まずは視力低下が考えられますが、その他の眼の病気もありえます。早期の発見と治療が、子どもの視力を守るために非常に重要です。視力の低下は勉強や日常生活にも影響を与えることがあり、放置すると悪化する可能性もあります。そのため、異常の指摘があった際には、できるだけ早く眼科での詳しい検査を受けることをおすすめします。当クリニックでは、最新の検査機器と国家資格である視能訓練士が正確な検査を行い、小児眼科の専門医がお子さまの目の健康をしっかりとサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください

子どもの近視について

近年、子どもの近視が増えているという報道を多く見ますし、小学校ではタブレット端末が配布されておりその影響を心配する親御さんは非常に多いと思います。

近視は遺伝因子と環境因子の両方が関与しているとされています。

海外の研究では、子どもの近視のリスクとして、両親の近視の有無が重要であるとされ、少なくとも片方の親が近視である場合の子どもが16歳までに近視になるリスクは、両親とも近視ではない子どもと比較して6倍高いとされました。
また、近視の発症を予測するために覚えておきたいのは、7歳までに近視または近視傾向にある子どもは、10歳までに近視になるリスクが非常に高いということです。12歳以下の子どもの近視は、13歳以降に発症した近視と比較すると2倍以上進行が早いことがわかっており、低年齢で発症した近視ほど強い近視度数に到達する傾向が強いことがわかっています。

最近の知見では、16歳までに近視の進行が停止する子どもは約50%で、18歳までに停止するのは約75%でした。約20%は20歳以降になってもまだ近視が進行することが示されました。
近視が強くなると、すぐに目が見えなくなるということではないですが、40代以上の年齢になってくると近視が原因となる網膜剥離や緑内障、網膜に新生血管ができる病気など今の医学でも治療が非常に困難な病気があります。


子どもの近視が伸びるのをできる限り抑制させつつ、沢山本を読んで勉強して、沢山身体を動かして、健やかにすくすく成長させてあげたいというのが、すべての小児眼科医の願いです。

近視抑制には、多焦点ソフトコンタクトレンズ、オルソケラトロジー、特殊なレンズデザインの眼鏡、レッドライト治療法などが海外で実施されています。それぞれに一長一短があります。

当院では、下記の低濃度アトロピン点眼による薬物療法としての近視進行予防治療を行っております。

低濃度アトロピン点眼液について
(自費診療)

当院では、毎晩1回両眼に点眼する0.025%低濃度アトロピン点眼液の自費診療を行っています。当院では隣接している薬局に調剤を依頼しており、この薬局から毎月1回当院処方箋を提出して購入して下さい。当院での診療は半年1回の視力検査を含めた定期検査を受けて頂き、医師が異常がないことを確認した上で点眼を継続させていきます。

  • 冷蔵庫で保管する
  • 1か月以上経過した点眼液は余っていても廃棄する
  • 継続させた方が効果が高いため断続的に使用するのではなく、途切れないようにしてください。

上記の点に注意して、医師の指示をよく聞いて十分理解した上で使用してください。

低濃度アトロピン点眼薬の
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子どもの白内障

白内障とは水晶体に混濁を生じる疾患です。様々な病態で水晶体が濁るので広い意味での総称です。
症状がない場合もありますが、通常は黒い瞳孔が部分が白色になる(白色瞳孔)、片方の眼の視線がずれているようにみえる(斜視)、眼が揺れている(眼振)などがあります。
その中に、先天的な原因によって、生まれたとから乳幼児までの間に発症するものを、先天(発達)白内障といいます。前述しましたように、視力を含めて視覚が発達する感受性期は限られており、形態覚遮断弱視という病状にならないように、それを予防するために手術するべきか、いつ手術するのかを考えて治療を行っていきます。
その他にも、小児の場合は腎臓病など種々の疾患の治療のためにステロイドの全身投与が続いた結果生じるステロイド白内障や、その他の薬剤によって生じる薬剤性白内障、打撲などの外傷によって生じる外傷性白内障、アトピー性皮膚炎によって生じるアトピー性白内障、ぶどう膜炎と呼ばれる自己免疫による目の炎症が続いた結果生じる併発白内障などがあります。

診断と治療

混濁の程度が強く視機能の発達に重大な影響を与えるような強い白内障は、見つけ次第速やかに手術を行い、形態覚遮断弱視を防止します。混濁の程度が軽く視機能の発達にはそれほど影響がないと考える白内障は、十分な検査が可能になる年齢まで待ってから、手術をするべきか検討します。行わないと判断した場合、混濁が強くなってくることもあるので医師の指示に従って定期検査を受けてください。
2歳未満のお子さんは成人の白内障手術と異なり、眼内レンズを挿入しても成長とともに想定された度数からずれることがあり、2歳未満では眼内レンズを挿入しないことが多いです。術後には眼鏡や特殊なコンタクトレンズによる屈折矯正を行うことが必須になります。また、小さな子どもは術後に水晶体の残りの細胞が増殖することによって生じる後発白内障が生じやすいため、慎重な術後の経過観察を受けます。
お子さんが白内障手術を受ける場合には、当院が連携している医療機関に速やかにご紹介致します。

参考文献:日本小児眼科学会.「子どもの眼の病気-発達緑内障(先天緑内障)」⇨ (別ウィンドウが開きます)

子どもの緑内障(小児緑内障)

子どもの頃には発症する緑内障を小児緑内障といいます。眼の中には透明なきれいな水(眼房水)が100分に1回取り換える速さで作られて眼球の中を循環しているのですが、この水の捨口となる隅角(ぐうかく)がきちんと形成されていないことが原因の原発性と、他の眼および全身疾患による異常や後天的な要因が原因となっているものを続発性と、大きく分けられています。
3歳以下で発症した緑内障では、高い眼圧によって子どもの軟らかい角膜や強膜が伸ばされて眼球が拡大し、黒目の部分が大きくなるため、ウシのように見えることから「牛眼」とよばれます。
症状は全くないこともありますが、涙がちだったり、まぶしがったり、黒目の角膜が白く濁ったりということがあります。

診断と治療

小児緑内障の診断には、眼圧検査、隅角検査、眼底検査などが必要になってきます。
当院では、子どものための手持ち式眼圧計であるiCare®を用いて測定しております。勢いよく空気がでてくるノンコン(ノンコンタクトトノメーター)と呼ばれる測定方法を成人で用いますのでご存じの方も多いと思いますが、当院では子どもが怖がることが多いため12歳以下ではこの方法で測定は行いません。また、医師が診察室で角膜や目の表面を涙で溶ける色素で染色した上で行う接触型眼圧計(Goldmann圧平眼圧計)で行うこともあります。いずれにしましても、医師がお子さんの病態や年齢に応じて適切な測定方法を選択して検査を行います。
小児緑内障はその原因に応じて薬物治療や緑内障手術を行います。
お子さんでも毎日使いやすく、病態に適した緑内障治療の点眼薬を処方し、眼圧を下げていく治療をします。その後は定期的に受診して、眼圧がきちんと下がっているのかを確認します。
隅角の形成に異常がある原発性では手術による治療が基本となります。
手術が必要な場合には、連携している医療機関に速やかにご紹介させて頂きます。

子どもは、乳幼児期に見る能力を発達させて8歳くらいの臨界期までに視機能が完成し、それ以降は発達しなくなってしまいます。小児緑内障は早期発見と適切な治療が非常に重要です。視力や視野を守るために定期的な眼科検査を受けで状態を把握することも不可欠です。見え方や目の状態で気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

iCare®で眼圧を測定している様子

ステロイド緑内障

ステロイドホルモンを含む薬物を継続的に使用すると房水流出が障害されて眼圧が上がることがあり、これにより発症した緑内障をステロイド緑内障と呼びます。眼の中の水を捨てる隅角の奥にある組織がステロイドによって膨らんでしまい、水の出口が狭くなり、水が捨てられないのに水の産生が続くために眼圧が上がっていくといえばわかりやすいかもしれませんね。
ステロイドの中止によって房水流出が正常化して眼圧が下がることが多いのですが、もともと原発性開放隅角緑内障などの緑内障が存在していたと思われるケースもあり、必ず眼圧が正常化するとは限りません。眼圧の状態によって降圧治療が必要になります。この緑内障の起こりやすさには薬物の種類・投与方法と体質が関係することがわかっています。

診断と治療

ステロイド薬に起因する眼圧上昇の場合、ステロイド薬を中止することで眼圧が下がることもあります。
ステロイド緑内障はその人の体質によるとされているほか、年齢依存性と容量依存性が報告されています。つまり、若い人ほど眼圧が上がりやすく、より大量のステロイドを、より長い間投与されているほど発症しやすいことが知られています。そのため、小児のアレルギー性結膜炎や春季カタルに対して、ステロイド点眼や軟膏を投与する場合は十分な注意と眼圧のモニタリングが重要になります。

子どもの外傷、気を付けたいアクシデント

眼や目の周囲にボールや家具などが強く当たったり殴打されたりすると、眼球が前後の押しつぶされて、眼球の中の圧力や眼球の周りの圧力が一時的に急激に上がって、眼や眼の周りの組織に損傷を生じることがあります。

たとえば、野球ボールが勢いよく眼球に当たった場合には、下記のような眼の損傷がありえます。

  • 結膜

    結膜下出血

  • 角膜

    角膜上皮の欠損など

  • 前房

    前房出血・隅角離開

  • ぶどう膜

    虹彩炎など

  • 水晶体

    水晶体脱臼・外傷性白内障

  • 網膜

    網膜振盪症・網膜裂孔・網膜剥離・外傷性黄斑円孔・網膜出血・硝子体出血

  • 視神経

    外傷性視神経損傷

  • 眼窩

    眼窩吹き抜け骨折

その他、熱傷ややけど、洗剤が目に入ってしまうなどの薬剤による化学損傷もあります。

小さなお子さんのいるご家庭では、瞬間湯沸かし器のコード配線は子どもの触れない位置におさまっているかご確認下さい。台所でお料理をするときはお子さんが足元にいないように気を配ってください。熱いコーヒーをテーブルの端においてつかまり立ちのお子さんが顔からかぶって顔面の大やけどをするということもあります。
もしも、キッチンや洗濯などの漂白洗剤など薬剤が目に入った場合、とにかく服のままでも急いで頭からシャワーを浴びせて見ずで洗い流して下さい。とにかく急ぎます。30分以上長く行った方がいいという文献もあります。十分に洗い流して速やかに眼科のクリニックに相談して受診してください。

日常的に子どもは怪我がつきものすが、取り返しがつかない怪我や事故もありえます。保護者の方が安全に十分配慮をお願い致します。洗剤や包丁が入っている棚は小さなお子さんがいる家庭ではロックをかけてくださいね。角度がとがっているテーブルや棚にはお子さんが成長してしっかり歩けるようになるまでは、衝撃緩衝のクッション材は販売されていますので使ってみるのもいいと思います。「石やボールペンを人に向かって投げたり蹴ってはいけないよ」「爪楊枝やお箸を使って食べながら歩くと危険だよ」と日頃からお子さんに語りかけていくことがお子さんの大きなけがや事故を防ぎます。

子どもの眼の腫瘍:網膜芽細胞腫

網膜芽細胞腫は、乳幼児におおくみられる悪性腫瘍で、1万5千人~3万人に1人が発症するとされ、これは小児がんの2.5%~4%を占めています。
網膜芽細胞腫は両眼性に発症するのと片眼性の場合がありますが、両眼性のほぼ100%、片眼性の約10%が遺伝性とされています。全体としては遺伝性が約40%、非遺伝性が約60%とされています。
症状としては、片眼または両眼の瞳孔が、猫の目のように白く光って見えます。
眼底検査では網膜に特徴的な白色の腫瘍がみえます。進行すると、眼圧が上がったり網膜剥離が生じます。また、発見が遅いと眼球の外に腫瘍が浸潤して広がったり脳に転移することもあり、この場合は予後不良のこともあります。
治療は、網膜芽細胞腫は悪性腫瘍であるため、あくまで生命を守ることを治療の大前提とし、そのうえでできる限り眼球を温存して視機能を温存して守ることを目指します。つまり、眼球の中に比較的小さく限られた範囲にとどまっている腫瘍であれば、レーザー治療(瞳孔を通じて赤外線レーザーを照射します)、冷凍凝固(腫瘍を凍らせて破壊します)、小線源治療(放射線内照射という治療法)などを行って腫瘍部位のみを破壊するという治療方法をとります。しかし、視力が期待できない大きな腫瘍が眼球の中にある場合や、眼球の外や視神経にすでに浸潤していたり緑内障を伴っている場合には、腫瘍を眼球ごと摘出する治療を行います。大きな腫瘍や眼球の中で腫瘍細胞が飛び散っている(播種:はしゅ)している腫瘍の場合は、化学療法を先に行ってから上記の局所療法を行います。

全身疾患を持つ子どもと目の病気

眼の症状や異常が生じる全身の病気は多岐にわたります。眼科診療では、小児に限らず、全身疾患に伴う眼科所見の確認を他科から依頼されることが大変多く、眼科医が全身疾患の診断に関わることもあります。また、眼の症状やその所見が、初発症状として全身疾患の早期発見につながったり、眼の症状や所見を通じて病状や治療の効果を確認することもあります。
「目は口ほどにものをいう」ということわざがありますが、心の様子だけではなく、眼の中を観察することは身体の様子を表すこともあるのです。
とくに、自分の見え方や症状を上手く説明できない子どもにおいては眼科受診が必要な全身の病気がいくつもあります。
下記はその代表的な疾患です。

  • ダウン症

    白内障や屈折異常の合併が多く、定期的な経過観察が必要です。

  • 代謝異常

    ホモシスチン尿症(水晶体偏位や白内障)、高オルニチン尿症(夜盲)、ムコ多糖代謝異常(角膜混濁)、脂質代謝異常(Tay-Sachs病などではcherry-red spotや視神経萎縮)、金属代謝異常(Wilson病ではKayser-Fleischer輪という特徴的な角膜異常)

  • 糖尿病

    子どもの糖尿病でも成人同様の定期検査が必要です。

  • 甲状腺機能亢進症

    眼瞼後退や腫脹、眼球突出など。それに伴う角膜障害やドライアイなど。

  • 母斑症

    太田母斑(眼瞼や眼球に色素斑)、その他に、von Hippel-Lindau病(網膜血管腫、滲出性網膜剥離、続発緑内障)、Sturge-Weber症候群(脈絡膜血管腫、続発緑内障)も必ず眼科診療が必要な疾患です。神経線維腫症1型(von Recklinghausen病)は虹彩結節が多発し、視神経をくるんでいる鞘に腫瘍ができる視神経膠腫や続発緑内障をきたすことがあります。結節性硬化症は、網膜過誤腫という白色の腫瘍病変ができることがあります。良性腫瘍ですがあまりに多発すると見え方に影響があるため経過観察を行います。

  • 眼皮膚白皮症

    かつて白子症といわれていました。メラニンの生成が先天的に異常があり、生まれた時から皮膚や毛髪、そして眼の色素が少なかったり消失しています。網膜が完全に作られておらず視力が低く、眼振や羞明が強いことがあります。

  • 膠原病

    若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、Sjogren症候群、サルコイドーシスなど。

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